モヤモヤするのは当たり前
〜「心のノイズ」を知って楽になる 〜

モヤモヤするのは当たり前
〜「心のノイズ」を知って楽になる 〜

人間生きていれば、モヤモヤすることは必ずあります。
仕事で上司や先輩に怒られた時、仲間との会話の中でモヤモヤ、故郷の両親が気になってモヤモヤなど、モヤモヤゼロで毎日スッキリ生きることなど、無理なことでしょう。

そんなモヤモヤを抱えている人たちの中には、どうにかして「モヤモヤを解消しなければ」と、もがいている人がいるのではないでしょうか。無理に解消しようともがくと、ますます泥沼に入ってしまいかねません。

今回は、人はなぜモヤモヤするのか、そのモヤモヤとどう付き合えばいいのか、専門家に取材しました。
お話をうかがったのは、「モヤモヤは無理に解消しなくていい、“心のノイズ”に気づけば気持ちが楽になる」といった内容の著書『自己肯定感低めの人のための本』がベストセラーとなっている、メンタルノイズカウンセラーの山根洋士先生です。
モヤモヤとの程よい付き合い方をご紹介します。

山根洋士氏プロフィール

一般社団法人メンタルノイズ心理学協会チェアマン。「心のクセ」を治して現実を変えるメンタルノイズカウンセラー。『自己肯定感低めの人のための本』『自己肯定感低めの人が一生お金に困らなくなる本』など著書5冊で累計15万部以上の発行部数を誇る。YouTubeも活用しながら、8,000人以上がオンライン講座を受講している。

モヤモヤの原因は「心のノイズ」

「人間は生きていれば、必ずモヤモヤするもの」と山根先生は言います。
怒りとも、悲しみとも、イライラともちょっと違う「モヤモヤ」って、一体どんなものなのでしょうか?

山根先生は、モヤモヤの原因は「心のノイズ」だと教えてくれました。

「心のノイズ」とは、「これまでの自分の価値観と違ったことに直面した時に発生する、何とも言えない気持ち」だそうです。

人は、6歳くらいまでの体験や記憶により自分の価値観を「潜在意識」として持つようになります。これが、人が誰でも持つ「心のクセ」です。しかし大人になっていろいろな人や出来事と接するようになると、これまでとは違った気持ちに直面します。そんな、これまでの「潜在意識」と異なる状況に直面した時に「心のノイズ」が発生するのだそうです。

「心のノイズ」は、「自分が思っていることとは逆のこと」と接した時に、「〇〇してはいけない」とか「〇〇すべき」というフィルターとなって発生します。例えば人間関係でモヤモヤしている場合、「相手が自分のイメージするような対応をしてくれない」とか、「相手が自分の言うことを理解してくれない」といったことが要因になっているケースが多くありませんか?

それは、自分の中でイメージしている反応と、相手からの反応にギャップがあるとも言い換えられます。そのギャップが理由で、「心のノイズ」が発生するのです。

このような場合、山根先生は「モヤモヤを解消する」のではなく、「折り合いをつける」のがいいと教えてくれました。

「自己肯定感」は無理に上げなくてよい

モヤモヤは「心のノイズ」に起因して起こります。
特に若い人は、経験が少ないがゆえにモヤモヤしやすい傾向があるのだそうです。

山根先生の著書の中に、「気持ち=解釈×現実」という表現があります。

これまでの自分の経験によって構築された無意識の「潜在意識」が、今起きている「現実」に対する「解釈」を行います。40~50代にもなれば、経験も豊富になるので、いろいろな現実を俯瞰して「昔もこのような経験をした」と、これまでの経験をベースにうまく「解釈」できるようになります。ベテランには「解釈」のバリエーションが多いのです。しかし若者は、まだ経験が浅いので、今起こっている「現実」に対しての「解釈」のバリエーションが少ないために「心のノイズ」が発生しやすくなります。

ただ最近は、価値観が大きく変化しているため、40~50代のベテランが、価値観の変化に対応できずにモヤモヤするケースも増えてきていると言います。結局、人間は生きていれば誰もがモヤモヤするということです。

「心のノイズ」が特に発生しやすい人の傾向として、「真面目に頑張る人」や「決め事やルールに従順な人」が挙げられます。このようなタイプの方は、「モヤモヤしていて当たり前と考え、まずは“心のノイズ”に気付くだけで気持ちが楽になる」と、山根先生は言います。

「モヤモヤ」との折り合いのつけ方

では、どのようにすれば「心のノイズ」に気付けるのでしょうか。
山根先生が推奨しているのが、「裏表思考法」です。

「裏表思考法」とは、「モヤモヤした現実」に対して、「改善した場合のメリット(表)」と「改善した場合のデメリット(裏)」の両面を考えることです。

具体例で考えてみます。
例えば、あなたが「上司から仕事が遅いと言われモヤモヤしていた」とします。

その場合の「表(改善した場合のメリット)」は、下記のようになります。
・上司から怒られなくなる
・仕事の達成感が得られる
・仕事の評価が上がる
など

一方で、「裏(改善した場合のデメリット)」は、下記のようになります。
・他の仕事も依頼されるかもしれない
・今の実力以上の能力が必要となるかもしれない
・誰かに苦手な作業を助けてもらう必要が出てくるかもしれない
など

「裏表思考法」をやってみると、「仕事が遅いと言われた」ことに対して、何がひっかかっていたか「心のノイズ」が見えてくる気がしませんか?

「裏表思考法」で「心のノイズ」を見つけることができれば、「折り合いのつけ方」も見えてきます。一番良くないのは、モヤモヤの原因が分からないままに、「自分を責めるループ」に突入することです(下図参照)。「自分責めのループ」から脱出するためにも、「裏表思考法」で「心のノイズ」を見つけてみてください。

※山根先生の著書「自己肯定感低めの人のための本」をもとにLO活-thinkで作成

山根先生は、「裏表思考法」を「モヤモヤの質を変える方法」だと教えてくれました。場合によっては、「前向きにあきらめること」だと言い換えられるかもしれません。

「仕事が遅いと言われた」ことに対して、例えすぐに改善ができないとしても、「仕事が増えそうだから、今は無理をしない」や「今はこれ以上努力する余裕はないから、無理はしない」のように、自分の中で折り合いをつけることが大切です。このようにできれば「自分責めのループ」に突入することもなく、気持ちも楽になります。

ちなみに、最初は「裏表思考法」の「裏(改善すると困ること)」を見つけるのに苦労するかもしれません。そんな時は自分の話ではなく、仮に「友達がこの状況でモヤモヤしていたらどうだろう」と、他人のケースに当てはめてみたり一般論として考えてみたりすると、イメージしやすいと山根先生がアドバイスしてくれました。

モヤモヤさんへのメッセージ

いかがでしょうか、「心のノイズ」に気付くことで、モヤモヤに「折り合い」がつけられて、気持ちが楽になることが分かりましたでしょうか?

山根先生に、モヤモヤを抱えている人が、生活の中で実行してみるといいことを質問すると、「散歩実況中継」がおすすめだと教えてくれました。

「散歩実況中継」とは、何の気なしに散歩に出かけ、目に入るものを唱えていくというものです。「〇〇の花が咲いています」「〇〇な人が、犬を散歩させています」「〇〇な香りがお店からしてきます」のように、次から次へと見えたまま・感じたままを中継していくものです。声に出さなくても、心の中で唱えるだけでも構いません。このように、見えたもの・感じたものを唱えていくと、これまで囚われていた気持ちから抜け出すきっかけになるのだそうです。

例えば、旅に出て雄大な景色を見た時に、「人間なんてちっぽけなものだ」と思うことがありますよね。「散歩実況中継」は、そのようなケースの縮小版になるのだそうです。

山根先生は、モヤモヤしていても「自分の可能性を、自分で閉じないこと」が大切だと教えてくれました。「自分は自分のままでいい、生きているだけで価値がある」と考えることを「自己肯定感」といいます。ただ、無理に「自己肯定感」を上げようとすると、自分に自信が持てる何かを持たなければいけないといった「べき論」となり、かえって自分を苦しめてしまうことにつながります。

「〇〇になるべき」と自分を苦しめる前に、ぜひ「心のノイズ」との折り合いのつけ方を身につけて心を楽にしてください。

【参考】
山根先生のYouTubeチャンネルでは、いろいろなアドバイス動画を公開しています。
https://www.youtube.com/channel/UCslhXIh3I5Z-tSUubCYwLUQ