地方ならではの仕事探訪
ローカルな仕事の魅力と
醍醐味に迫る!
醍醐味に迫る!
人は仕事を決めるとき、多くの選択肢から十分検討しているように思えますが、実は自分の目に入るごく狭い範囲から選んでいるに過ぎません。例えば、都市部に住んでいればあらゆる仕事が選択肢にあるように思えますが、地方特有の仕事は知らぬうちに排除されています。実はその中にあなたにピッタリの仕事があるかもしれないのに――。
そこで本記事では、都市部での就職活動ではなかなか出会えないような、地方ならではのユニークな仕事を見てみたいと思います。
文化庁が承認する日本遺産に登録されている仕事「海女(あま)」
潜水して海中の貝類や海藻類を採る「海女」は、日本全体の従事者の約半数が三重県で働いています。他には千葉県や石川県、北は岩手県などで漁を行っており、アワビやサザエ、真珠の原料であるアコヤ貝などを採っています。海女は、漁の際にダイビング機材など使いません。いわゆる素潜りですが、人によっては5分間にも及ぶ潜水ができます。
現在では、素潜りで海女漁を行う国は日本と韓国だけだそう。その希少性から、文化庁が認定する「日本遺産」にも登録されています。ちなみに男性の場合は「海士」と書きますが、読み方はいずれも「あま」。海女に女性が多い理由は諸説ありますが、女性は体脂肪が多いため潜水に向いているからという説が有力なようです。2019年時点で、三重県で働く海女の数は約750人。年々減少傾向にある状況を打破しようと、本来は家業であったものが、最近は意欲ある新人の育成にも力を入れているようです。「日本遺産を仕事にする」、そんな人生に興味のある人は、ぜひ詳しく調べてみてください。
東北地方に広がる伝統工芸「こけし産業」に携わる!
こけしは江戸時代から続く伝統的な木製玩具で、現代では工芸品として知られています。皆さんも、おじいちゃんやおばあちゃんの家などで、見たことがあるのではないでしょうか?こけしは宮城県をはじめ、東北地方で主に作られています。鳴子(宮城県大崎市)、遠刈田(宮城県蔵王町)、土湯(福島県福島市)が「日本三大こけし」の名産地とされていますが、他にも東北には多くの産地があり、その系統は10を超えるそうです。地域ごとに仕掛け(首の揺れやすさなど)や模様に違いがあり、その多くが職人の手仕事です。
近年では、海外でこけしブームが起こったり、有名なアパレルブランドとコラボしたりなど、おしゃれな雑貨としても人気。中には、海外展開に積極的な工房もあります。ただ、残念ながら、全体の流れとしては職人や工房の数は減少傾向。東北には、こけしの展示館・資料館、こけしをテーマにした宿泊施設や専門店などが色々あります。こけし関連の仕事に就いて、日本の文化を世界に発信する仕事は、いかがでしょうか?
世界が驚嘆する広島県の職人技「熊野筆」
広島県安芸郡熊野町は、日本一の筆の生産量を誇り、作られる筆は「熊野筆」と呼ばれます。私たちが小学校の書道の時間に使った毛筆も、その多くは熊野町産です。また、近年ではメイクブラシの産地としても有名です。2000年代の国内全体の生産量に対する熊野筆の割合は、毛筆80%、画筆85%、化粧筆90%と、圧倒的なシェアを誇っています。2015年時点で「熊野筆」を商標契約(=生産)している会社は52社にのぼり、地域の多くの人が筆の生産や販売に携わっていることが分かります。
書道用の毛筆の需要が高かった時代には、町民の実に9割近くが筆に関わる仕事をしていたとされ、生産工程の機械化が進んだ現代でも、町の主力産業であることに変わりはありません。都市部にいると、何でもあるし、何でも手に入る反面、特産品や名産品といったものとは縁遠い暮らしになりがちです。熊野町のように、町全体で支える産業の支え手の一人として、横のつながりを大切にしながら仕事をするのも、面白いのではないでしょうか。
日本のアパレルを支える名脇役!兵庫県の「革職人」
靴や鞄に使用される国産の革のうち、約7割は兵庫県が占めています。中でもメッカは姫路市・たつの市で、大小さまざまな革関連工場が200以上も集まっています。また、そのような背景から、兵庫県発の靴や鞄のブランドも多く、県内で製造から加工、販売まで、多くの人が皮革関連の仕事をしています。
原料の状態から衣料などの素材として出荷されるまでに多くの工程があり、靴や鞄などの最終製品になるまでにも、染色や縫製などの大変な手間がかかります。そのため、工場によって担う工程や仕上がりに特徴があり、技術者の得意分野もさまざまです。さらに、兵庫県の場合は、日本の多くの地場産業が職人の高齢化、後継者不足で悩んでいるのに対し、ファッション業界ということもあり、若手が多く活躍しています。ある意味、ファッション好きが集まる聖地ともいえる兵庫県で、お洒落に生きる道はいかがでしょう?
国内一強の眼鏡王国!福井県鯖江市
目が悪い人にとって欠かせない相棒である眼鏡。国内産の眼鏡は、そのほとんどが福井県産であることをご存知ですか?福井県の眼鏡フレーム国内シェアはなんと96%です。この数字には周辺の福井市なども含みますが、一大産地である鯖江市は人口7万人ほどと、さほど大きな町ではありません(福井市は約26万人)。それでも、イタリア、中国と並び世界三大産地のひとつに数えられています。
ちなみに、鯖江市にある眼鏡関連企業の数は600社以上といわれ、中国などで生産される価格優位性のある商品に対し、確かな技術力に裏打ちされた高品質分野で高いシェアを獲得しています。鯖江市で生産される眼鏡は、視力を矯正する医療器具であること、フィット感をとても大切にすることから、職人の手作業で作られるものも多いとか。近年は、ファッション小物としての需要も高まっている眼鏡市場において、鯖江がいかにして世界と戦っていくか。その渦中で奮闘してみるのも、楽しそうではありませんか?
おわりに
「仕事なんて、どこで探しても一緒」では決してないことが、お分かりいただけたのではないでしょうか?今回紹介できた地方特有の仕事は、ほんの一例に過ぎず、日本列島のあちらこちらに、実にユニークな仕事があります。そして、そのような仕事の大半は、残念ながら自ら情報を取りに行かないと、偶然出会えるものではありません。
例えば、興味のある県名や地名+求人で検索してみてください。ハローワークを含め、ローカルな求人情報に出会うことができるでしょう。あるいは離島+求人や漁業+求人のように、関心のあるキーワードとクロス検索してみるのもオススメです。また、各県とも都市部で積極的にUIJターンのフェアを開催しています。県や市区町村が主催するフェアは、地元企業は無料、もしくは格安で出展できるものも多いため、大手人材会社が開催するフェアでは決して出会えないようなユニークな会社に出会える可能性が高いです。一度足を運んでみてはいかがでしょうか?
人が一生に携われる仕事の数は限られています。ぜひ、ひとつでも多くの選択肢の中から、あなた自身にフィットする、かけがえのない仕事に出会ってください。