モヤモヤ解消ケーススタディ

CASE 10

残業が多くてつらい

残業にまつわるモヤモヤを抱えている人は、少なくありません。では、残業が何時間以上だとつらいのでしょう? その答えは人それぞれです。月に100時間を超えるなら当然つらいでしょう。でも、50時間程度なら平気という人がいる一方で、1時間でも絶対に嫌だという人もいます。反対に、残業してでも仕事を終わらせたいのに、どうしてもさせてもらえないのがつらいという人も。残業にまつわるモヤモヤは、単なる量的な問題ではなく、「どんな働き方をしたいのか」ということに行き着きます。
さて、残業にまつわる失敗思考と成功思考を見ていきましょう。
※この原稿は、3人の現役キャリアアドバイザーに取材した結果を編集部で構成し作成しました。

【失敗思考】

● 残業のつらさを超える価値は?
失敗思考の人は、自分がどんな働き方をしたいのかがあやふやである傾向にあります。例えば「残業が多くてつらい」という相談がありました。しかし、その人の勤める会社はちょっとインターネットで調べれば明らかに残業が多いと分かる職場です。それなのに、なぜ入社したのでしょう? 答えは「残業が多いと分かっていたが、面白そうだったから」。その人は、残業につらさだけにしか目がいかない状況で、残業よりも価値を感じていた「面白さ」に目を向けることができずにいたのです。
一口に残業と言っても、状況は会社によって、人によって違います。残業は多いけれど出社時間は融通が利いたり、○月と○月は極端に忙しいけれどそれ以外は定時で帰れたり。こんなふうに長期的に見たときにバランスが取れていれば受け止め方も変わってきます。もしあなたが今の会社に入社したばかりで実情が分からないのなら、話しやすい先輩などに聞いてみましょう。

● 残業前提のスケジュールになっていませんか?
残業がつらいと言いながら、残業することを前提にスケジュールを組んでしまっているケースも見られます。会社あるいは部署全体が、残業をすることが当たり前になっていて、上司のチェックが夕方以降に戻ってくる仕組みになっていたり、夜に会議を入れることに誰も異議を唱えなかったり。こうした体質に陥っている職場は、全員が本気になれば容易に短縮できることがあるはずです。

若手社員が言い出すのは少々気が引けるかもしれませんが、本当は誰も残業したくないはず。部署全体で、あるいは部署横断で改善に取り組むなど、一人の問題ではなくみんなの問題として解決に当たることができれば効果的でしょう。

● 仕事に熱中できていますか?
失敗思考の人は自分を客観視できていないことが多く、残業がつらいことの影に隠れている問題に気付いていないケースも。若いうちは、やりがいのある仕事なら時間を忘れて没頭できるもの。反対に、嫌で仕方のない仕事であれば毎日定時で帰れたとしても苦痛です。つまり、問題の本質は仕事に楽しさを見出せていないことにあるのかもしれません。

今は根性論で日々の残業に耐える時代ではありません。残業がつらいと感じたなら、なぜつらいのか掘り下げてみましょう。帰ってからやりたいことがあるのか、残業時間が半分ならよいのか、そもそも今の仕事が向いていないのか。第三者と話しながら、あなた自身の状況を客観的に分析してみましょう。

ところで、残業しているのに手当がないというのは法令違反です。非合法な残業を強いられるような劣悪な環境である場合は、すぐに転職することをお勧めします。

まとめ
失敗思考の人は、仕事を選ぶ上での優先順位が曖昧だったり、周囲に流されてしまったり。あるいは、残業のつらさの根底にある問題に気付けていない場合も。いずれにしても、自分が求める働き方のイメージがつかめていないことに要因があります。

【成功思考】

● 働き方のイメージを持つ
では、成功思考のケースを見てみましょう。成功思考の人は「こんなふうに働きたい」というイメージを持ち、それを踏まえて会社選びをしています。また、何もかもが理想的な職場はないと考えているので、仕事内容、やりがい、残業時間をはじめとする働き方など、さまざまな要素を全体として捉えたうえで納得しています。

実際、業界や会社によっては残業が常態化しています。けれども、残業の多い少ないについてはインターネットなどである程度リサーチすることが可能です。特に残業の少ない会社は採用活動におけるアピールポイントとして明示している場合が多いので、残業時間が気になる人は必ずチェックしましょう。

● 今いる環境から気付きを得よう
とはいえ、新卒で就職活動をするときはまだ社会人経験がないのですから、働き方についてクリアにイメージするのは難しいかもしれません。もし残業の多い会社に入ってしまい、そうした働き方が自分には合わないと気付いたら……。その経験を生かして、あなたにとってしっくりくる働き方を見つければよいのです。素晴らしい環境で働いている人が成功思考なのではなく、環境に振り回されることなく、どんな状況でも成果やスキル、気付きを得られる人が成功思考なのです。

● 業務改善は成長のチャンス
若手であれば慣れない仕事も多く、同じことをするのに先輩より時間がかかってしまうのは仕方のないことです。それだけに、成功思考の人はこれを成長のチャンスとして生かします。残業が多いのであれば、業務のやり方を改善して、より短い時間で同じ成果を上げられるように工夫するのです。残業を強いるような会社になぜそこまでしなければならないのだ? と思うかもしれませんが、得をするのは会社だけではありません。その経験は確実にあなた自身の実力として蓄えられ、スキルアップにつながります。

まとめ
成功思考の人は、自分に合った働き方を知っています。それがそう簡単には見つからないから困っているんだけど……という人は、ぜひ周囲の人に相談してみてください。それがあなたとは異なる価値観、違う経験値を持つ人ならなおよいでしょう。第三者に話すことのメリットは、直接的な解決策を得ることではなく、人に話すことであなた自身の考えを言語化することにあります。人間は誰しも自分のことすらよく分からないもの。誰かと話すことは、自分を知ることへの近道なのです。