モヤモヤ解消ケーススタディ

CASE 03

業界・会社の未来が不安

世界は目まぐるしく動いています。さらに今回のコロナ禍を経て、あらゆる業界・会社が予想もしていなかった影響を受けています。そんな中、今働いている業界・会社の将来に漠然とした不安を抱えている人も多いことでしょう。ただし、このモヤモヤには、本当に深刻な場合と、別の問題を業界不安に転嫁してしまっている場合とが見られます。肝心なのは、不安の正体を見極めること。そして、小さくてもいいから自分なりのアクションを起こすことです。
さて、業界・会社の不安にまつわる失敗思考と成功思考を見ていきましょう。
※この原稿は、3人の現役キャリアアドバイザーに取材した結果を編集部で構成し作成しました。

【失敗思考】

● 未来永劫、安泰な業界ってあるでしょうか?
「この業界・会社は先行きが厳しいのではないだろうか?」と不安に思うことは、決して失敗思考ではありません。しかし「じゃあ、どの業界・会社なら安泰だろう?」と考えるのは、失敗思考の始まりです。なぜなら、絶対にいつまでも安泰な業界や会社など、存在しないから。一生何の不安もなく働ける業界や会社に入ることなんて、宝くじで高額当選するようなものなのです。今いいと思えるところも、数年後はどうなっているか分かりません。このことは、今回のコロナ禍で多くの人が実感したところです。

もしあなたが働いている業界や会社が明らかに衰退産業で、将来的な展望がないのなら、転職すればいいのです。ただし、今現在安定しているところへ移ったとしても、いつかはそこもそうでなくなるということを頭に置いておかねばなりません。結局、自分が働きたいように働き続けるには、どこでもやっていける自分になるしかないのです。

● その不安は業界・会社の問題?
業界や会社の未来についてモヤモヤを抱くケースには、不安に思っていることをすべて他責にしているというパターンもあります。自分がうまくできないことや、望むような待遇を得られないことを、会社の体制や社会の状況のせいにしてしまっているのです。愚痴をこぼすのは誰でもあることですし、悪いことではありません。でも、あなたはその問題に対して何か行動しましたか? 若手の発言なんて聞き入れられないというのなら、発言力を高めるために成果を出そうと努力しましたか? ちょっと厳しい言い方かもしれませんが、何もしないで文句を言っているだけでは、会社や社会に責任を転嫁していることになってしまいます。

● いつの間にか価値観を刷り込まれていませんか?
では、どうして会社や社会に責任を転嫁するような思考になってしまうのでしょう? それは、本人のせいばかりとは限りません。周りの人からの刷り込みによるケースもあるからです。小さい頃から「○○業界に入れば生涯安泰だ」などと聞かされることの多かった人は、いざその業界に入ったのに先行きが暗くなったとき、裏切られた気持ちになるでしょう。

また、他人と自分を比べることも、失敗思考につながりやすいので要注意です。良いところばかりを耳にすると、ついついよその業界や会社がキラキラと輝いて見えるものです。それに対するやり切れない思いを、業界不安に置き換えてしまってはいないでしょうか? 勝ち馬に乗らなければ、あなたは絶対に成功できないのでしょうか?

まとめ
こうして俯瞰してみると、失敗思考の人は一つの価値観にとらわれてしまっている、ということが分かります。そして、どこかに永遠に安泰な場所があると思い込んでいるのです。

【成功思考】

● 不安を解消するために、アクションを起こそう
では、成功思考のケースを見てみましょう。冒頭で「この業界・会社は先行きが厳しいのではないだろうか?」と不安に思うことは失敗思考ではないとお伝えした通り、成功思考の人も同じような不安を抱きます。失敗思考の人との違いは、そこからプラスの発想をしていけるところにあります。

不安に思うのはなぜだろう? それを解消するにはどうしたらいいだろう? と考え、自分にできることを模索し、行動に移していくのです。孤軍奮闘するのは誰だってつらいですから、先輩に相談したり、同僚と話し合ったりするとよいでしょう。

● 自分の価値観を信じてあえて踏ん張る
中には、会社が今にも潰れそうだと分かっているのに「ここで逃げたくない」と踏ん張る人もいます。これもひとつの成功思考です。自分が携わっている事業やサービスを遂行することが世の中のためになると感じているならば、最後までとことんやりきるのは評価されるべきことです。ときには理不尽を被るかもしれませんが、その責任感と遂行力を買ってくれる人は必ずいます。ただし、この成功思考は、ある程度のキャリアを積み、一定のポジションに立つ人が持つべきものと言えるでしょう。

● 危機感を持つことは、成長の証し
本当に先行きが見えず、深刻な状況に陥っている業界や会社に縛られる必要はありません。短期的に見ても厳しい場合は、思い切って別の業界を目指して転職活動し、成長できる場を探せばいいのです。ちなみに、「今いる業界に不安があるので」という転職理由は、採用側から見てマイナス要素ではありません。業界や会社の将来を見据えることができるということ、危機感を持って仕事をしているということは、ひとつの成長の証しだからです。

成功思考の人は、社会は常に動いていて、どんな業界・会社も永遠に安泰なわけではないことを理解しています。まずは今いる場所でできることをやり切ること、その経験を積み重ねて、あなた自身の価値を高めていくことが大切です。

まとめ
成功思考の人と失敗思考の人を比較してみると、最大の違いは不安のもとが何であるかを直視できているかどうかにあります。「青い鳥症候群」という言葉がありますが、失敗思考の人はこれに当てはまるかもしれません。「今よりもっといい業界・会社があるはずだ」と、根拠のない青い鳥を探し続けているのです。不安の正体を自分なりに突き止めて、アクションを起こしてみましょう。それが転職活動であっても、その場で踏ん張ることであっても、業界を捉え直すことでもよいのです。その危機感が、あなたの成長のきっかけになるかもしれません。