モヤモヤ解消ケーススタディ

CASE 04

力不足だと感じる

どんな仕事も、最初から上手にできる人などいません。失敗することもあれば、自分の力不足に悔しい思いをすることもあるでしょう。でも、だからといって「この仕事は自分に合っていない」と早々に結論付けてよいのでしょうか? その自己評価は本当に正しいものでしょうか? 力不足にさいなまれたとき、まず試みてほしいのは、他者からの評価を取り入れてみること。異なる立場や違った価値観から眺めてみれば、あなた自身の見え方が変わるかもしれません。
さて、力不足にまつわる失敗思考と成功思考を見ていきましょう。
※この原稿は、3人の現役キャリアアドバイザーに取材した結果を編集部で構成し作成しました。

【失敗思考】

● 一つのやり方に固執していませんか?
失敗思考の人にしばしば見られるのは、「この仕事はこうあるべき」という固定概念です。しかし、例えば営業の仕事ひとつとっても、やり方は無限にあります。先輩たちの仕事ぶりをよく観察してみてください。取引先とのコミュニケーションの取り方、提案方法、資料の作り方、交渉の仕方など、みんなが全く同じということはないはず。特に仕事ができる人は、会社の基本ルールに則りながらも、自分の個性を生かした独自のやり方を見出しているのではないでしょうか?

仕事のやり方はひとつじゃありません。「この方法でなければいけない」「こう進めなくてはならない」という考え方をすると、たちまち手段が目的化してしまいます。あなたにとって最適なやり方を模索することこそが、あなたの実力に直結していくのです。

● 他責あるいは自責に傾いていませんか?
うまくできない仕事があったとき、他人や環境のせいにしてしまっていないでしょうか? 失敗思考の人の中には「他責的」な傾向を持つ人も。仕事の実力は、本人が意識的に吸収しようとしなければ身に付きません。まずは自分で自分の能力、すなわちできることとできないことを正しく認識して、できないことを克服するにはどうしたらいいかを考えてみましょう。

一方、「自責的」であればよいかと言えば、過剰な自責は負のスパイラルにつながってしまうケースがあるので、これもまた避けたいところです。きちんと仕事をしているのに、なぜか常に自信なさげ……という人がいます。その背景には何があるのでしょう? 自己肯定感が希薄な人は、せっかくできていることを自分で把握できていないことも。つまり、自分の視野や思い込みだけで判断してしまっているのです。

実際には仕事ができているのに力不足にさいなまれている人は、「あなたの仕事のおかげでトラブルが起きていない。それってきちんと業務が遂行できているってことじゃない?」など、根拠を示しながら論理的に仕事を評価すると、次第に自信を取り戻していきます。

本来なら、その人の仕事を真っ当に評価してくれる上司が身近にいればよいのですが、不幸にしてそういう人がいないこともあります。あるいは、そういう立場の人になかなか認められず、むしろ否定されて苦しむケースもあります。そんなときは、先輩や同僚など、自分とも上司とも違う視座から物事を見てくれる人に相談してみましょう。

● その仕事はあなたに向いている?
とはいえ、第三者から見ても一生懸命がんばっているのに失敗ばかり。自分なりに工夫したり、周囲にアドバイスを求めたりしているのに何年も状況が変わらない……というケースも。こうなると、その仕事はあなたに向いていないのかもしれません。気持ちを切り替えて、転職を考えてみてはいかがでしょうか?

まとめ
失敗思考の人は、他責的にしろ、自責的にしろ、自分だけの狭い視野で評価を下してしまっている、と言えます。ちょっとしたつまずきはどんな仕事にもあるもの。一度や二度のつまずきで、本当は向いているかもしれない仕事を手放すのはもったいないことです。

【成功思考】

●周囲の評価に耳を傾けよう
では、成功思考のケースを見てみましょう。成功思考の人は、自分自身を評価するときに他者からのフィードバックを積極的に取り入れます。「これもできない、あれもできない」と自分を責めているのは、あなた自身の主観だったりしませんか? 例えば、接客業や営業職なら、お客さんに「ありがとう」と言われたことはないでしょうか? 企業のスタッフ業務なら、他部署の人に「助かったよ」と喜ばれたことはないでしょうか? 自分なりにがんばっているという実感があるならば、周りからどう思われているか、もっと耳を傾けてみましょう。

● 第三者の一言で、景色が変わることも
もしあなたが自分を評価する立場にある上司と相性が良くない場合、それは大変つらいことでしょう。でも、こんなケースがありました。その人は上司と反りが合わず、何をやっても評価されませんでした。次第に気持ちもすさんでいきます。ところが、あるとき、同じ部署の先輩が思いがけず「お前、がんばってるな!」と声をかけてくれました。以降、気持ちが切り替わったと言います。誰かがちゃんと見てくれている、そう思えるだけで、目の前の景色が大きく変わることもあるのです。

職場の雰囲気というのは会社によって全く違うものです。先輩たちが後輩を放っておかず、嫌というほど褒めたりアドバイスしたりする会社もあります。また、後輩が試行錯誤するのを黙って見守り、自分から助けを求めたときにはじめて手を差し伸べる、そんな教育方針の会社もあります。一歩引いて見渡してみると、自分の会社の企業風土をうまく活用できるかもしれません。

● 斜め上の人に相談する
成功思考の人はメンター、あるいはメンター的存在の人を獲得しているケースが多いと言えます。メンターとは、指導者や助言者という意味ですが、この場合は自分を直接評価する立場の上司ではない人物を指します。隣の部署の先輩、以前その部署にいた先輩など、「斜め上」の立場の人に相談してみるのがおすすめです。

まとめ
成功思考の人と失敗思考の人の差は、他者からの評価やフィードバックを積極的に取り入れているかどうかにあります。自分と違う立場や価値観を持つ人の意見は、時には耳が痛いこともあるでしょう。でも、少なからぬ気付きをもたらしてくれるはず。周囲の力を借りて客観的に自分を見つめ直したとき、それでも力不足を感じたなら、自分を正しく認識できたということ。それは、まぎれもなくあなたの成長を意味します。