モヤモヤ解消ケーススタディ

CASE 05

人間関係がうまくいかない

転職理由として最も多いのが、人間関係にまつわる問題です。「やりがいを感じられない」「スキルアップできていない」など表面的には別の理由だと思える場合も、その根っこを掘り下げていくと職場の人間関係に行き当たることは少なくありません。どんな仕事も一人では完結しませんから、働いている限り、周囲の人々といかにうまくやっていくかということは永遠の課題です。しかし、誰もが直面するこの問題も、同じループに繰り返しはまってしまう人とそうでない人がいます。
さて、人間関係にまつわる失敗思考と成功思考を見ていきましょう。
※この原稿は、3人の現役キャリアアドバイザーに取材した結果を編集部で構成し作成しました。

【失敗思考】

● 最高の職場は存在する?
優しい上司に面倒見のいい先輩……気の合う人ばかりの職場があればそれに越したことはありませんが、それって現実的でしょうか? 失敗思考の人は、「どこかに最高の職場があるはずだ」という幻想にとらわれてしまいがち。「あの会社ではこうらしい」という周囲から聞きかじった都合の良い情報だけを切り貼りして、頭の中で理想の職場像を作り上げてしまうのです。でも、その素敵に見える会社には、本当につらいところや嫌なところはないのでしょうか?

● あなたに合った風土とは?
こんなケースがありました。「今いる会社のダラダラとした緩い人間関係が嫌だ。もっとバリバリ仕事がしたい」と、社員同士が切磋琢磨する会社に転職。しかし、その人は間もなく新しい職場で働くのがつらくなってしまいました。自分でも気付かないうちに、以前の職場の風土に慣れ切っていたのです。

こんなふうに、現実は何事もトレードオフです。優しい上司のいる職場は、スキルアップの視点から見ると物足りないものかもしれません。チームの結束が固い職場は、大変なハードワークである可能性も。それぞれの職場に人間関係のベースとなる「風土」があり、どんな風土にも良い点と悪い点があります。肝心なのは、自分にはどんな風土が合っているのかを知ることです。

● 長い目で考えられていますか?
風土というのは、職場によってさまざまです。もし徹底的に合わないと感じたなら、無理に染まる必要はありません。気持ちを切り替えて、転職すればよいのです。ただし、あなたのいる会社が多くの社員を抱える大きな組織なら、異動のチャンスもあるでしょう。たとえ同じ会社であっても部署によって風土が違うことは十分考えられますから、冷静に見極めたいところです。

実際、人間関係を気にする人ほど、今目の前にいる人との相性だけで判断したり、面接官の印象で転職を決めたりする傾向にあります。けれども、一生その人と共に仕事をするわけではないケースも多いはず。第三者に相談してみるなどして、一歩引いたところからあなた自身の状況を長い目で見つめ直してみましょう。

まとめ
失敗思考の人の多くは近視眼的で、固定観念にとらわれています。その傾向が強過ぎると、結果的に「最高の職場」という「ないものねだり」の状態に陥ってしまいます。

【成功思考】

● 100%良好な人間関係は存在しない
では、成功思考のケースを見てみましょう。仕事とは、キャリアを積むほど関わる人の数も増えていくもの。次から次へと新しい仲間や強敵が現れるRPGさながら、人間関係はより複雑になっていくでしょう。そんな中、成功思考の人は、100%良好な人間関係なんてどこにも存在しないことを理解しています。

だからこそ、人ではなく風土で職場を選びます。一つの会社に長年勤めている人がいたら、ぜひ話を聞いてみてください。例えば、スピード感のある展開にやる気を刺激されていたり、じっくり向き合うやり方に心地よさを感じていたり、長続きする人というのはその会社の働き方や走り方、雰囲気になじんでいる人なのではないでしょうか?

● 相手の立場で考える
とはいえ、成功思考の人も人間関係につまずくことがあります。肝心なのは、それを環境や他人のせいにしないことです。よくない状況を招いている要因を探り、それが自分にあるのなら改善に努めます。相手の立場で考えること、自分が絶対に正しいと思わないこと、失敗や勘違いを素直に認めることが、次のステップにつながります。

しかしながら、誰にも非はなく、ただただ相性が悪いだけという不幸なケースがあるのも事実です。そのことに気付けたならば、転職や異動に向けて具体的に動き始めましょう。

● 第三者的な視点で自分を見つめよう
では、どうしたら人間関係がうまくいかない要因を探り当てることができるのでしょう? ポイントは「客観性」です。成功思考の人は、自分とは違う価値観を持つ人と何らかの交流を持っているもの。多様な価値観に触れることで、第三者的な視点で自分のことを見つめられるようになるのです。

まとめ
多くの人を悩ませる人間関係の問題ですが、失敗思考から成功思考へ転じるには、状況を客観的に俯瞰することが必須です。一人で抱え込んでしまうと幻想や期待ばかりが膨らんでしまいますし、また価値観の合う者同士で話していても愚痴の言い合いになりがちです。例えば年齢が離れている人や、あなたとは異なる環境で過ごしてきた人などに相談してみましょう。年上の人に話し掛けるのは少々勇気の要ることではありますが、先輩世代の多くは頼られるとうれしいと感じるはず(万が一「あれ?」という反応だったらやめておいて、次の人に話し掛けましょう)。新しい価値観に触れることが、負のループから脱するためのヒントをもたらしてくれるでしょう。